リレーコラム

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CARBON CIRCULAR ECONOMY

Vol. 30

「株式会社竹中工務店の建物完結型バイオガスシステム
「メタファーム®」のご紹介」

1.はじめに

 

 商業施設やホテルからは毎日多量の生ごみが発生していますが、リサイクル率は小売業62%、外食産業43%(令和2年度:農水省HPより)で、国が定めた目標達成に向けてより一層の努力が求められています。リサイクルされていない生ごみの多くが外部の処理施設で廃棄物として処分されています。当社は、生ごみを建物内でバイオガス化し、電気や熱に変換して地産地消に貢献する建物完結型バイオガスシステム「メタファーム®」を開発しました。メタファーム®では、エネルギーを生む一方で、従来の生ごみ運搬・処分で発生するCO₂やコストを削減できることから、脱炭素社会構築に貢献するリサイクル技術としてお客様への提案を進めています。

 

 

2.建物完結型バイオガスシステム「メタファーム®」

 

 生ごみのリサイクル手段の一つとしてメタン発酵がありますが、メタン発酵の残さ(消化液)の処理に多くの電力を使用するため、脱炭素効果、経済性を考慮すると大規模化が避けられず建物単体で完結するシステムは実用化されていませんでした。メタファーム®では、メタン発酵と厨房排水を処理する厨房除害設備を連携させて生ごみと厨房排水を一体的に処理することで、脱炭素効果と経済性の向上を同時に達成し、建物単体でのシステム導入を可能としました。(図1)

 

 

3.メタファーム®の特長

 

 メタファーム®には以下の特長があります。

① 厨房排水中の固形分をメタン発酵の原料として回収することで、バイオガスを効率的に生成します。
② ①での固形分回収により、厨房除害施設への負荷や汚泥発生量を低減します。
③ ②で負荷が軽減した厨房除害施設を利用して、メタン発酵の残渣(消化液)を処理します。
④ 生ごみ・厨房排水・消化液を配管移送するので衛生面に優れ、運搬時の労力も削減します。

 

 

4.導入実績

 

 メタファーム®はあべのハルカス(大阪府大阪市)(図2)の他に、1.2t/日規模が大型ショッピングモールに導入されています。あべのハルカスでは、2014年の全面開業以降、生ごみ発生量2t/日・厨房排水量600m³/日程度を安定的に処理しており、創出されるエネルギーがシステムを稼働させるために必要なエネルギーを上回っている状況にあります。(図3)

 

 

5.おわりに

 

 竹中工務店は、脱炭素、SDGsおよび循環型経済社会への取り組みを推進するお客様に対して、メタファーム®をはじめとするソリューション提案を進めていきたいと考えています。

 

 

図1 メタファーム®の概要図

 

図2 あべのハルカスの設備外観

 

図3 あべのハルカスにおける発生エネルギー量と自家消費量エネルギー量

著者プロフィール

奈良知幸
株式会社竹中工務店 技術研究所 
環境・社会研究部 地球環境グループ 主任研究員
2008年に入社してバイオマス利活用や排水廃棄物処理の研究開発を担当。