リレーコラム

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CARBON CIRCULAR ECONOMY

Vol. 17

「循環炭素社会実現に向けたカーボンリサイクルファンドの活動概要」

1.設立背景

 

 2019年のダボス会議で我が国から提唱された「CO2を資源として利用」するカーボンリサイクルを国の政策とも連動しながら民間ベースでも推進する機運が高まりました。

 

そこで、2050年カーボンニュートラル達成や地球温暖化問題と世界のエネルギーアクセス改善の同時解決を目指し、2019年8月に一般社団法人カーボンリサイクルファンド(以下、CRFと省略)を設立しました。2022年度からは、自治体や学術機関(学術関係者)に対して新たな会員種別を設け、現在、100を超える企業・個人・自治体・学術機関等により構成される業種横断プラットフォームと産学官ネットワークとして機能しております。

 

CRFでは、カーボンリサイクルを広く捉え、地球規模での自然の炭素循環も上手く活用しながらCO2の徹底的な削減と利活用を進める「循環炭素社会」の実現を提唱し各種活動を推進しています。

 

図1 炭素循環社会のイメージ図(CO2の徹底的な削減と利活用に加えバイオ等自然の力も活用)

 

 

2.CRFの活動概要・会員一覧

 

 CRFは、国と連携して、カーボンリサイクルの社会実装と民間がビジネスとして取り組めるよう各種支援を行っています。CRFの活動は、会員からの年会費(法人:20万円、個人:1万円)と会員からの任意の寄付金を原資としており、(1)カーボンリサイクルに係る啓発活動を行う広報活動、(2)カーボンリサイクルに係る優れたアイデアを持つ研究者を助成する研究助成活動、(3)会員の声を行政に届ける政策提言やカーボンリサイクル技術動向の調査等を行っています。

 

 会員への情報提供や連携の場として、概ね毎月1回オンラインサロンを開催しています。CRF研究助成活動で採択された研究者からの講演やカーボンリサイクルに係る専門家の講演(例:カーボンプライシング、LCA、土壌固定、スタートアップ育成等)、及び、事務局からの話題提供による意見交換等を行い、毎回100名以上の参加を頂き好評頂いています。

 

また、毎週数10件程度、カーボンリサイクルやCCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)の最新動向に関する国内外のニュース配信を行い各国の政策・プロジェクト動向・企業動向・技術動向等の情報収集に活用頂き好評を頂いています。

 

各自治体のカーボンニュートラル実現には、再エネや省エネ推進のみでは達成は困難であり、地方の活性化に繋がらない恐れがあります。排出せざるを得ないCO2を回収し利用するカーボンリサイクルや農林水産業との連携でCO2を固定化するネガティブエミッション技術(吸収源)の活用が重要と考えます。このような中で、2022年度からは、各自治体のカーボンニュートラルへの取組に係るワーキンググループを設置し各自治体の特色を活かしたカーボンリサイクルの在り方や社会実装への道筋を議論する予定です。

 

図2 CRFの活動概要

 

図3 CRF会員一覧(2022年5月9日時点)

 

 

3.最近の主なトピック

 

3.1 広報活動(カーボンリサイクル大学、カボ・リサ物語)

 

 2021年度は、2050年カーボンニュートラル達成の中心を担う若手の教育に力を入れた広報活動を展開しました。

 

1つは会員企業の若手社員を対象としてスタートアップマインド醸成を行うカーボンリサイクル大学をスタートしました。ワークショップ形式で、課題解決型思考の醸成や日本のスタートアップ企業との議論を通じて事業化模擬体験を実施しました。これらの取り組みはNHK WORLD-JAPAN(下記、URL参照)でも紹介されました。

 

 もう一つはさらに若い世代(主に中高生)に向けてカーボンリサイクルの意義や取組を分かりやすく楽しく学べるコンテンツとしてカボ・リサ物語(詳細は、下記URLを参照)を展開しています。

 

〈NHK WORLD-JAPAN〉The Sings ‘Carbon Recycling’ カーボンリサイクル大学が最後の約5分紹介されました。
https://www3.nhk.or.jp/nhkworld/en/ondemand/video/2089021/

〈カボ・リサ物語〉次世代(主に中高生)に向けたカーボンリサイクルの意義・取組を学べるコンテンツ
https://carbon-recycling-fund.jp/public_relations/carbo_risa_story/

 

図4 カーボンリサイクル大学の概要

 

図5 カボ・リサ物語の概要

 

3.2 研究助成活動

 

2050年カーボンニュートラル達成に資する成果を期待して、CRF会員・非会員問わず企業・大学等の革新的なアイデアを持つ研究者(又は研究チーム)に対して、1件当たり上限1,000万円を助成しています。2021年度は、46件の応募から学識経験者らにより構成された採択審査委員会で審査を行い、12件を採択しました。本研究助成に採択後に国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のプロジェクトとして採択されるなど、成果が上がりつつあります。

 

2022年度も5月中旬から公募開始予定です。今回は、募集様式を簡略化したスタートアップ枠も設けることとしました。2050年カーボンニュートラル達成を目指すアイデアをお持ちのあなたからの応募をお待ちしております。

 

〈2022年度研究助成活動:グラントへのご応募〉
https://carbon-recycling-fund.jp/research_grant_activities/grant_application/

 

図6 CRFの研究助成活動概要

図7 2021年度CRF研究助成活動 採択テーマ一覧

著者プロフィール

鹿島 淳(かしま じゅん)

一般社団法人カーボンリサイクルファンド イノベーション部 部長代理

主に研究助成活動の推進に従事。

Web:https://carbon-recycling-fund.jp/