Vol. 48
「ギ酸が水素を運ぶ」
パーストープはスウェーデンに本社を置く化学メーカーです。パーストープはFINITE MATERIAL NEUTRAL(有限資源の再生化)を目指し、環境負荷の少ないモノづくりを徹底しています。
日本は、国内の水素製造と海外からの水素の購入を合わせた水素の「導入量」を、2040年までに年間1,200万トンに拡大するという目標を掲げています。水素はさまざまな資源から製造が可能で、しかも燃焼してもCO2を排出しないため、地球温暖化対策の一つとして世界から注目を集めています。では、水素を製造/輸送する過程ではCO2は排出されないのか。いえ、そうではありません。例えば、液体水素の輸送には約-253℃に冷却する必要があります。また、液体水素と同様に水素キャリアとして注目されるMCHは、脱水素の際に350℃まで加温することが要求されます。これには大きなエネルギーが必要です。水素を「使う」ことで環境負荷の軽減が期待されますが、さらにどのように「つくる」「運ぶ」かによっても、更にCO2の排出は減らせます。
そこで今、ギ酸が新しい水素キャリアとして世界中から注目を集めています。
ギ酸は赤蟻を蒸留して得られたことから蟻酸と名が付きました。アリの他にハチの毒腺や、イラクサ、マツなどの植物にも含まれています。ギ酸は家畜用飼料の防腐剤・抗菌剤、皮革加工、金属処理など幅広い分野で使用されて、日本でも流通しています。
ギ酸を水素キャリアとして選択するメリットの一つは圧縮機を使わず、ギ酸から簡単かつ連続的に高圧水素を取出すことができるという点です。副産物のCO2は液体として分離し、再利用が可能です。さらに、常温常圧で液体であり、特定濃度以下であれば危険物にも該当しないというハンドリング性も注目される理由の一つです。また水と二酸化炭素からギ酸を製造する技術研究も進められております。
さらに、パーストープはギ酸を製造する過程で出てくるCO2を回収しサステナブルなメタノールを生成し、ギ酸の原料の一部として再利用します。パーストープのギ酸で水素を供給することで、大きなCO2削減に貢献できると確信しています。
現在このサプライチェーン実現に向け、ギ酸水素の需要家様を探しています。ご興味・ご関心ある方いらっしゃいましたら、是非ともお声がけ頂けましたら幸いです。
著者プロフィール
森 千栄(もり ちえ)パーストープジャパン株式会社
リージョナルセールスマネージャー
2022年入社
ギ酸に限らず、環境対応型化学品の国内販売促進に従事