リレーコラム

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CARBON CIRCULAR ECONOMY

Vol. 34

「太陽熱利用による脱炭素社会への挑戦」

現在、我々が消費しているエネルギーを見てみると、家庭においても事業所においても電気ばかりでなく熱エネルギーを多く消費している。オフィスビルやホテル、病院などにおいては空調熱源に約30%と大きな割合である。ホテルや病院では給湯利用もされており、エネルギーの50%は熱エネルギーである。

 

 

しかしながら、脱炭素社会に向けて再エネ電力への関心は高まっているが、再エネ熱は浸透していない。太陽光発電のエネルギー変換効率が15%程度なのに対し、太陽熱利用システムは50%程度ある。熱需要に対しては再エネ熱を有効に活用することが脱炭素社会において重要となる。

太陽熱集熱器で出力する温度領域は60~100℃程度であり、これらの温度帯で最も多いのが給湯用途である。給湯ニーズがあるのは、ホテルや病院、福祉施設、公衆浴場、ゴルフ場など入浴用途の施設が多い。次に多いのがZEB(ネット・ゼロ・エネルギービル)と言われる建物での空調用途である。オフィスビルをはじめ、商業施設、庁舎、学校、図書館など全館空調を必要とする建物において吸収式冷凍機などの熱源として利用される。

 

 

(1)給湯システムの利用例(老人福祉施設)

 

一般的な太陽熱利用システムは、上図のようにボイラーと貯湯タンクで構成される従来の給湯システムにプレート式熱交換器を介して集熱器を閉鎖回路で組み利用する。閉鎖回路とするのは、2つの目的がある。1つ目は、熱媒が循環する配管の腐食やスケーリングのリスクを回避できるので設備を長期的に利用することができる。2つ目は、密閉回路内の水熱媒を加圧することで、100℃以上の高い温度で貯湯タンクに熱を伝えることができる。

 

 

(2)空調利用のシステムの利用例(生協共済ビル)

 

太陽熱を冷房や暖房、除湿など空調に利用する場合には吸収式冷凍機やデシカント空調機等との組み合わせでソリューションを構成する。

 

 

吸収式冷凍機は、上図のように吸収剤の再生工程で温熱(80~90℃程度)を必要とする。つまり、80℃以上の熱があれば冷房が出来る。

デシカント空調機は、除湿空調のシステムですが60℃程度で再生可能であり、室内の湿度を下げることで、冷房の温度を下げなくても涼しく感じるのが利点である。

 

 

(3)地域熱供給用途の利用例(北海道ガス)

 

 

 

(4)冷凍ショーケースの着霜防止用途の利用例(沖縄SAN-A&PARCO)

 

 

 

(5)文化財保護施設の含侵装置用途の利用例(松浦市埋蔵文化財センター)

 

 

 

 

(6)下水処理場における汚泥乾燥用途の利用例(とよとみクリーンセンター)

 

 

 

 

(7)熱化学水素昇圧用途の利用例(福島再生可能エネルギー研究所)

 

 

 

 

(8)農業用ハウス暖房用途の利用例(青木養鶏場)

 

 

再生可能エネルギー熱利用は、太陽熱に限らず、地中熱やバイオマス熱があります。これら再エネ熱が再エネ電力と並んで普及していくことこそが「カーボンニュートラル」への近道ではないでしょうか。今後、当社では太陽熱を地中に蓄熱して季節間利用するシステムや太陽熱で氷蓄熱する冷房システムなどを市場に出していきたいと考えています。

著者プロフィール

寺田雅一(てらだ まさかず)
株式会社寺田鉄工所 代表取締役社長 
創業1917年。キーエンス、サマンサタバサジャパンリミテッドなど異業種を経験した後、2007年に寺田鉄工所7代目社長に就任。