Vol. 13
「ライフサイクルアセスメント(LCA)を用いた環境負荷削減」
近年、以前にも増して、脱炭素・カーボンニュートラルに向けた取り組みが盛んになっています。カーボンニュートラルを実現できているかどうかを判定するためには、定量的な分析が不可欠です。県立広島大学小林研究室ではCO2排出量をはじめとする様々な環境影響を見える化(定量化)する手法であるライフサイクルアセスメント(LCA)に関連する研究を行っています。
当研究室では、ものづくり・社会づくりにおけるCO2排出量などの環境負荷削減策の検討はもちろん、評価手法などの活用方法の提案、その評価に必要不可欠なデータベース(原単位)構築も行っています。特に、環境負荷削減策の検討は、建築物や建築材利用にかかわる内容を中心に研究しています。
(A) ものづくり・社会づくりの環境負荷評価
直近では、建築物に係る資源循環性の評価や環境負荷削減策の検討を行ってきました。建築資材に関する検討では、例えば、建築分野で大量に使用される木材について、ライフサイクル(森林での木材生産から建物解体後の木くず処理まで)におけるマテリアルフローを年次別に構築・分析しました。より低負荷な木材利活用のあり方を検討してきました。
建築物に関する検討では、例えば大東建託様との共同研究により、集合住宅としてはわが国初となるカーボンニュートラルな住宅であるLCCM(ライフサイクルカーボンマイナス)住宅を達成しました。このほか民間企業、自治体など、多岐にわたって様々な研究に関わらせて頂いています。
(B) LCAの活用方法の提案
LCA を用いた環境情報は近年急速に多様化しています。これらを用いて環境情報を発信するためには、評価方法のあり方や、結果の見せ方など様々な課題があります。そこで、建築物などを例に取り、評価における課題の調査や、その改善策の提案に資する研究を行っています。
(C) LCA の評価に不可欠なデータベース整備
CO2 排出量などの環境負荷量を算定するためには、計算のための原単位(係数)データベースを整備する必要があります。そこで、我が国最大級のデータベース(IDEA)の研究・開発に関わっています。また、国内の分析だけではなく、輸入品の評価も可能とするため、海外の原単位を簡易的に構築する手法などを構築しています。このほか、評価における精度に関する研究も行っています。
著者プロフィール
小林謙介(こばやしけんすけ)県立広島大学 生物資源科学部 生命環境学科 環境科学コース 准教授
小林研ウェブサイト(https://www.pu-hiroshima.ac.jp/p/kensuke/index.html)
LCAと建築物にかかわる研究活動に取り組み、LCAに不可欠な原単位データベース”IDEA”の開発に従事。また、日本建築学会地球環境委員会LCA小委員会主査などを歴任。