リレーコラム

CONTACT

CARBON CIRCULAR ECONOMY

Vol. 6

「中国電力グループ2050年カーボンニュートラルへの挑戦」

 当社グループの2050年カーボンニュートラルへ向けた取り組み方針と火力発電の脱炭素化に資する技術開発の取り組み状況についてご紹介します。

 

 当社は、2021年2月に中国電力グループとして「2050年カーボンニュートラル」へ挑戦することを表明し、主要な取り組みについてのロードマップをお示ししました。このロードマップでは、当社グループの柱であるエネルギー事業において、再エネや原子力の最大限の活用に加え、燃料の持つエネルギーを高効率で電気に変換する石炭火力やバイオマス発電の開発の他、水素・アンモニア等の脱炭素電源を検討・活用することで、脱炭素化を目指すことを示しています。また、再エネを活用した新サービスの提供を通じて、お客さまの脱炭素化に向けた支援を行うこととしています。

 

 2050年カーボンニュートラルの実現には、CO2を排出しない再エネの導入拡大が非常に重要となりますが、同時に出力が天候等により変動する再エネを安定して活用していくためには、その出力の変動による電力の過不足を調整可能な火力発電を一定程度活用していく必要があります。当社の2050年目標の達成のためには、この火力発電にかかるイノベーションが鍵を握るため、ここでは、当社が取り組んでいる最新の技術開発の状況についてご紹介します。

 

 当社は、電源開発株式会社と共同で設立した大崎クールジェン株式会社を通じ、石炭をガス化して、ガスタービンと蒸気タービンにより複合発電するシステムにCO2分離・回収と燃料電池を組み合わせたIGFCと呼ばれる革新的低炭素石炭火力の実現を目指した実証試験を推進しています。この発電技術は、従来型の石炭火力(USC)と比べて、燃料の持つエネルギーを電気に変換する効率(発電効率)が飛躍的に向上するため、実用段階において約30%のCO2排出量の削減が期待できます。加えて、回収したCO2を化学品・燃料・鉱物等の原料として利用(カーボンリサイクル)したり、地中深くに貯留・圧入することで大幅なCO2削減につなげることができるため、カーボンニュートラル実現のための有望な選択肢になり得ると考えています。

 

 また、経済産業省は、ここ大崎上島を、「カーボンリサイクル3Cイニシアティブ」における実証研究の拠点に位置付けており、大崎クールジェン株式会社が分離・回収したCO2をカーボンリサイクルの研究を行う企業・団体へ供給することを計画しています。この取り組みの中で、当社は、コンクリート製造時のCO2排出量を実質ゼロ以下にすることができる、従来の「CO2-SUICOM」を、鉄筋コンクリート製品や現場打設構造物等にも適用を拡大する研究開発を行っており、2024~2026年度頃の商用化を目指しています。さらに、二種類の微生物がもつ発酵機能を活用し、火力発電所から排出されるCO2を用いて、化粧品や健康食品などの原料となる付加価値の高い脂質を生産する研究開発も行っており、2030年頃の商用化を目指して取り組みを進めています。

 

 

 当社グループは、これまでも環境対策などの社会的課題解決のため、先んじて、新技術の採用を積極的に進めてまいりました。これからも、当社グループだけでなく他社とのアライアンスや大学との産学共同研究など、異業種・異分野とも連携しながら、カーボンニュートラルという大きな目標に挑戦してまいります。

著者プロフィール

高倉 秀和(たかくら ひでかず)

中国電力株式会社 経営企画部門(設備・技術)担当部長

1968年生まれ,富山出身,30年近くエネルギー・環境・地域行政等に関わった後,2021年から現職。