広島県立安古市高等学校の1・2年生を対象としたカーボン・サーキュラー・エコノミーを学ぶ特別授業を開催しました。
将来的な、カーボンリサイクル関連技術の研究・開発等を担う人材育成に向け、広島県立安古市高等学校の全校生徒のうち、希望者約40名(主に1・2年生)を対象に、カーボン・サーキュラー・エコノミーを学ぶ特別授業を開催しました。
●開催日 2024年12月13日(金)15:50~16:40
●開催場所 広島県立安古市高等学校
■授業風景
「二酸化炭素ってどんな物質?」
生徒への問いかけから授業はスタートしました。グループで活発に意見交換を行う様子が印象的で、「環境に悪い」、「地球温暖化の原因」といったマイナスの意見が目立ちました。
ショートワーク終了後、広島県イノベーション推進チームから地球温暖化と二酸化炭素の関係性や、地球における二酸化炭素の歴史や役割について説明した上で、化石燃料のメリット・デメリットや、カーボンニュートラルの実現にあたり、二酸化炭素を有価物ととらえ、回収し、利用する「カーボンリサイクル」の重要性について学びました。生徒は、日本の二酸化炭素排出量や、二酸化炭素を資源として利用するという今まで知らなかった概念に驚く様子でした。
また、広島県のカーボンリサイクルについての取組や、カーボンニュートラル実現にあたっての行政の役割を説明し、二酸化炭素の削減・利活用を進めて地球温暖化という大きな課題に向き合っていくには、生徒の皆さんを含む地域に住む一人ひとりが一体となって取り組むことが重要であると、説明を受けました。
授業後半は広島大学の津野地助教より、様々な二酸化炭素の削減方法や自身の研究分野とその将来ビジョンについて説明いただきました。生徒は大気中の二酸化炭素を回収する技術「DAC(Direct Air Capture)」に代表される二酸化炭素の負の排出(ネガティブエミッション)に関する最新の技術や動向について興味深く聞いている様子でした。講演を受けて、「DACには膨大なエネルギーが必要だと思うが、どのように賄うのが最適か」「ごみの埋め立て地も限られてきている中で、空気中から回収した二酸化炭素を埋蔵する土地の余裕はどのくらいあるのか」といった、さらなる疑問や興味を抱いている生徒も多くみられました。
また、研究者の役割の一つは、これまでにない技術を生み出すことにより、地球温暖化対策の新しい選択肢を示すことであるとお話しいただいたのに対し、生徒からは「これからは将来を担う自分たちの世代が、地球温暖化を阻止するために自ら歴史の分岐点を作っていかなければならないと改めて思った」との感想がありました。
最後に改めて「二酸化炭素ってどんな物質?」という問いかけを行いました。生徒からは「二酸化炭素をなくすことよりも、二酸化炭素とどう向き合っていくかが大切である」「人の使い方次第で良い影響・悪い影響を与えうる物質」「排出物だが資源にもなる」といったように、授業を通じて二酸化炭素のイメージに変化が現れていました。
授業後のアンケートからは、「世界では、二酸化炭素排出量をうまくコントロールすることで持続可能な社会の実現を目指していることがわかった。」「地球温暖化を解決していくためには、二酸化炭素を削減するという方法しかないと今まで思っていたが、減らす以外の方法や考え方がたくさんあり、その一つとしてカーボンリサイクルの研究を進めていくことは、自然と人間が共存していくために必要だと学んだ。」「二酸化炭素を新しい資源として化学品や燃料等にリサイクルする発想に驚いた。」との意見がみられ、二酸化炭素との向き合い方やカーボンリサイクルの意義について、とても印象に残っている様子でした。
■まとめ
生徒に対し、カーボンリサイクルという新しい発想・技術があることや、広島県の取組と行政の役割などを伝える貴重な機会となりました。文系・理系に関係なく、授業に参加した生徒の皆さんが二酸化炭素の利用価値について深く考察していた姿や、前向きな意見や感想がみられたことから、次世代教育の価値を改めて実感いたしました。こうした、将来的なカーボンリサイクル関連技術の研究・開発等を担う次世代との交流にご興味のある方がいらっしゃいましたら、ぜひ事務局までご相談ください!
<協力>
広島大学大学院先進理工系科学研究科 津野地 直 助教