リレーコラム

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CARBON CIRCULAR ECONOMY

Vol. 50

「アンモニアから燃料電池自動車用水素燃料の製造について」

大陽日酸株式会社は、日本酸素ホールディングスにおける国内事業の中核会社であり、創業110年を超える歴史を持つ産業ガスのリーディングカンパニーです。
私たちは「The Gas professionals」として、産業ガスを起点に培ったガステクノロジー技術とガスアプリケーションを活用し、カーボンニュートラル社会への実現に貢献してまいります。
本コラムでは、カーボンニュートラルに向けた水素関連の取り組みの一環として、ご紹介させていただきます。

 

 

内閣府総合科学技術・イノベーション会議の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「エネルギーキャリア」(管理法人:国立研究開発法人 科学技術振興機構)の委託研究課題「アンモニア水素ステーション基盤技術」において、国立大学法人 広島大学、昭和電工㈱(現㈱レゾナック・ホールディングス)、国立研究開発法人 産業技術総合研究所、㈱豊田自動織機、大陽日酸㈱が共同研究により、アンモニアから燃料電池自動車用高純度水素の実用可能な技術の開発に世界で初めて成功し、アンモニアを原料とした水素ステーション(アンモニア水素ステーション)の実現に向けて大きく踏み出しました。

開発段階でのアンモニア水素ステーション実現のためにブレイクスルーしなければならない大きな技術課題としては以下 3 点がありました。

 

①高活性高耐久性アンモニア分解触媒
②残存アンモニア濃度を 0.1ppm 以下にでき、再生が容易なアンモニア除去材料
③水素純度 99.97%を達成できる精製技術

 

これらの技術課題に対し、世界トップレベルのアンモニア分解用ルテニウム系触媒を調製したアンモニア分解装置、アンモニア除去材料を作製した残存アンモニア除去装置及び水素精製技術を利用した水素精製装置を実証システムの1/10スケールで開発し、各装置を組み合わせることで、世界で初めてアンモニアを原料とした燃料電池 自動車用水素燃料製造を可能としました。

 

開発の社会的背景として、化石燃料の枯渇に伴うエネルギー問題、大量のエネルギー消費による環境汚染問題を解決するため、燃焼後には水しか出ない水素が、クリーンエネルギー源として期待されています。その一方で常温での気体である水素は、その効率的な貯蔵・輸送技術の開発に大きな課題があります。その課題解決に常温、10気圧程度の条件で容易に液体となるアンモニア(NH3) 1 分子は 3 原子の水素をもつため水素量が多く、水素エネルギーのキャリアとして魅力的な化学物質と注目されました。今後は、当社の培った水素精製技術を本システムと一体で展開を図り、燃料電池自動車用水素源としての普及を目指します。

 

図1 アンモニア分解水素の利用イメージ

 

 


図2 大陽日酸製水素精製装置

著者プロフィール

大上 信男(おおうえ のぶお)
大陽日酸株式会社
工業ガスユニット カーボンニュートラルビジネスプロジェクト
第二チームリーダー
広島県出身、1998年入社。
産業ガス営業部門、2023年現職。