リレーコラム

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CARBON CIRCULAR ECONOMY

Vol. 42

「艤装品製造の鉄工所がカーボンニュートラルを目指し挑戦開始」

株式会社京泉工業は、船舶艤装品の製造販売を行っている尾道の企業です。
尾道は、しまなみ海道沿岸のため近隣には多くの造船所と舶用工業が立地しております。

 

海事分野でも国際海運GHGゼロエミッションプロジェクトとして、ゼロエミッション船と呼ばれる温室効果ガスを排出しない次世代燃料船の建造を目指しています。
その目標に向かって造船業界は代替燃料の群雄割拠になっています。
代替燃料には、LNG・アンモニア・水素・メタノールなど様々な燃料が検討されています。
併せて船体の省エネルギー化や帆船の使用による省エネルギー化など様々なアプローチで検討が行われています。
船舶の寿命は竣工から解撤まで、概ね20年と言われております。
そのため2030年ごろまでに第一世代のゼロエミッション船が投入されていかなければ、2050年に温室効果ガス排出ゼロにはできないと言われています。

 

その様な造船業界で、当社は鉄艤装品と呼ばれる、鉄・ステンレス・アルミなどを使用した製品を製造販売しております。
当社もこのような変化に対応できる技術を取得しながら、代替燃料関連製品を製造しております。

 

 

取扱製品一例

 

 

 

当社は艤装品メーカーではありますが、どちらかといえば鉄工所という色合いが濃く、顧客が設計した製品を製造する場合が多く、いわゆる製造下請け企業です。
多くの下請け企業がそうであるように、カーボンの削減や循環などの突出した技術はございません。
カーボンについても昨年、広島県のカーボンニュートラルへ向けたものづくり産業支援事業を受けながら、自社のCO2排出量をやっと算定致しました。

 

広島県の支援事業は、コンサルティング支援として、株式会社電通様に伴走支援をしていただきました。

 

最初に、燃料・電気使用量・項目別購入品・エネルギー・製品廃棄・従業員移動・製品運送などカテゴリーごとの数値を収集するのですが、当社では情報が散在しており、情報が紙媒体しか存在しないものや、情報は収集しているが部署で属人化しているものなどが多くあり、情報を集めるだけでも数か月を要しました。

 

伴走支援があったので、収集すべき情報がピンポイントで理解でき、数か月で情報収集、半年でCO2排出量算出、取組事項選定まで進めたと思います。

 

現在は、選定したCO2排出量削減の取組に努めています。
当社の様な零細中小企業の製造業では、工場設備機器は旧式なものも多く、工場設備機器を省エネルギータイプに刷新する事で削減が図れます。

 

当社のCO2排出量の70%は購入した鉄系素材(Scope3)が占めており、鉄艤装品メーカーである当社としてはとても頭が痛いところです。

 

今回の広島県カーボン・サーキュラー・エコノミー推進協議会参加も協議会で情報を収集し、異業種の技術を舶用に結合し、検討していきたいという目的で参加いたしました。

著者プロフィール

安保 国雄(あぼ くにお)

株式会社京泉工業 技術統括本部 技術経営部部長 兼 設計部次長

2001年入社(尾道市出身) 設計部に所属、詳細設計及び生産設計業務に従事。
2017年7月に創設された技術経営部に配属、企画・情報システム・新規事業の業務に従事。