リレーコラム

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CARBON CIRCULAR ECONOMY

Vol. 52

「低コストかつ高効率なCO₂回収技術について」

九州大学発スタートアップの株式会社JCCLは、世界中のCO₂排出量の削減を目指して研究・技術開発を行っております。
CO₂の回収分野において、JCCLのCTOである九州大学工学研究院の星野友教授のチームは、生体内の高効率なガス交換システムを応用した材料「アミン含有ゲル」を開発し、特許を取得しました。
JCCLはこれをコア技術として、(1)高性能・低コストなCO₂吸収材(固体吸収剤、選択透過膜)と、(2)その性能を最大限に発揮する装置(CO₂回収装置、分離膜性能評価装置)の製品化・事業化を行っております。

 

 

(1)固体吸収剤・選択透過膜について

CO₂固体吸収剤の特徴は、燃焼後排ガスなどの水分を含んだ気体からのCO₂回収に高い性能を発揮します。また、CO₂選択透過膜は、CO₂回収に対する選択性が極めて高く、回収が難しい低濃度(1%)のCO₂でも膜に1度通すだけで75%以上に濃縮ができることから、DACなど低濃度のCO₂回収に優れております。

 

 

 

(2)CO₂回収装置・分離膜性能評価装置について

上記のCO₂吸収材を使った私たちのCO₂回収装置の大きな特長が回収コストの大幅な低減です。従来のアミン吸収液を使った手法では、CO₂と吸収液の結合が強固なため、CO₂脱着に高温加熱という大きなエネルギーが必要でしたが、私たちの吸収材はCO₂と温和に結合するため、50℃付近の低圧蒸気を流すだけで脱着が可能となり、従来比でおよそ4分の1までランニングコストを低減できることを確認しております。

 

 

 

また、工場の燃焼後排ガスなどの水分を多く含むガスからのCO₂回収においては、湿度が高いほどCO₂をよく吸収するという特長により、ガスや吸着剤の乾燥工程が不要となるため、その分のエネルギーコストもカットできます。

2024年5月24日より、(2)でご紹介した分離膜性能評価装置とCO₂回収装置の受注販売を開始しました(※1)。これらのJCCLの商品や技術は、「自社開発した分離膜で回収可能なCO₂の量や濃度を定量的に評価したい」、あるいは「CO₂吸収剤や吸着剤によるCO₂回収のコストの検証や研究用に利用したい」などのニーズをお持ちの工場やごみ処理場、企業や大学、研究機関等における研究開発用途などに幅広くご利用いただけます。

 

このような九州大学発の技術を社会に実装することにより、2050年カーボンニュートラルの実現と、地球規模のCO₂利活用に向けた課題解決に貢献したいと考えております。

 

 

 

また、弊社では、装置や材料の販売のほか、各企業様において製作されたCO₂吸収材料の性能評価や試験、CO₂回収に向けた共同研究や実証実験、各種シミュレーション、CO₂回収に関するコンサルティングサービスなどにも対応しております。皆様からのお声掛けをお待ちしております。

 

最後になりますが、弊社装置や材料の開発にあたっては、公的機関(※2)や学術機関、複数の事業者のご支援を受け、産官学連携の成果として完成いたしました。この場をお借りして心から感謝申し上げます。

 

 

※1:2024.5.24付プレスリリース「九州大学×福岡市×株式会社JCCL、CO₂分離・回収のための装置及び材料の製品化に成功!」
※2:NEDO、JST、JAXA、文部科学省、福岡市等

著者プロフィール

馬場崎 敬(ばばさき たかし)
株式会社JCCL 事業開発部

福岡県出身、2007年から約17年間福岡市役所に勤務。
特例制度を活用し、2024年に株式会社JCCLに入社。
事業開発、営業、広報等に従事。