リレーコラム

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CARBON CIRCULAR ECONOMY

Vol. 22

「CO₂を吸収する「普通」のコンクリート」

-「現場打ち」や「鉄筋コンクリート」にも対応-​

 

1.はじめに

 

大成建設は、温室効果ガスの主要成分である二酸化炭素(CO₂)を資源として回収・利用する「カーボンリサイクル・コンクリート:T-eConcrete®/Carbon-Recycle」を実用化しました。産業副産物を活用してCO₂排出量を削減する環境配慮コンクリートの技術と、CO₂を資源として利用するカーボンリサイクル技術を組み合わせ、コンクリートの製造に関わるCO₂排出の収支がマイナスになる「カーボンネガティブ」を達成しました。従来の「普通」コンクリートと同様に、「現場打ち」や「鉄筋コンクリート」として使用でき、脱炭素社会の構築に貢献します。

 

 

2.環境配慮コンクリート:T-eConcreteシリーズ

 

 社会インフラの構築に欠かせないコンクリートは、セメントと水や砂、砂利などを混ぜて製造します。主原料のセメントは、1t生産する際に470~480kgの副産物や廃棄物を活用し、わが国の資源循環量の約11%を担っています。一方、温暖化ガスについてはセメント1tあたり約770kgものCO₂を排出しています。セメントを大量に使用する建設業界もコンクリートの脱炭素化を急いでおり、大成建設は、セメントを副産物で置き換えた環境配慮コンクリート:T-eConcrete​の開発・社会実装を進めています(図1)。

 

 

3.カーボンリサイクル・コンクリートの特徴

 

カーボンリサイクル・コンクリート:T-eConcrete/Carbon-Recycleは、セメントの代わりに製鉄副産物である高炉スラグを使い、セメント由来のCO₂排出量を大幅に削減します。さらに、CO₂を吸収して製造した炭酸カルシウムを大量に混ぜ、1m³あたり98~171kgのCO₂を内部に固定します。これらを合わせ、CO₂排出量からCO₂吸収・固定量を差し引いたCO₂の収支がマイナスになる「カーボンネガティブ」を実現しました。1m³あたり45~116kgのCO₂を大気から除去します。また、従来(CO₂排出量:235~274kg/m³)と比較して1m³あたり280~351kgのCO₂を削減します。

 

多くのコンクリート構造物は鉄筋を使用します。コンクリートは強アルカリ性なので、鉄筋は保護膜(不動態皮膜)に覆われ、水や酸素が侵入しても錆びません。ところが、酸性のCO₂をコンクリートに吸収・固定するとアルカリ性が中和されて保護膜が壊れ、鉄筋が腐食してコンクリート構造物の強度が損なわれる恐れがありました。そこで、CO₂を直接コンクリートに吸収・固定せず、炭酸カルシウム(CaCO₃=CaO+CO₂)の粉末に変換して混ぜることにしました。炭酸カルシウムは弱アルカリ性なので、混ぜてもコンクリートのアルカリ性が保たれます。また、粉末を追加するだけなので特殊な装置や設備が不要で、従来の製造設備を活用できます。工場でコンクリート部材や製品を造るプレキャスト製造だけでなく、工事現場で生コンとして打設すること(現場打ち)が可能です。強度や耐久性も従来のコンクリートと変わりません(図2)。

 

 

4.おわりに

 

 大成建設では、これらの環境配慮コンクリートの社会実装を進めています。他方、新しい技術として法・規準類への対応や、環境性能の評価なども並行して検討しています。また、CO₂を資源化した炭酸カルシウムのサプライチェーンの構築に向け、異業種連携も積極的に進めています。

 脱炭素社会の実現には、産業界が一丸となり、地球規模のサーキュラーエコノミーの最適化問題として取り組む必要があります。主要な建設材料であるコンクリートがその一端を担うことになれば幸いです。

 

図1  T-eConcreteシリーズの構成と特徴

 

図2  カーボンリサイクル・コンクリートの特徴と適用例

著者プロフィール

畑山 昌之(はたやま まさゆき)

大成建設株式会社 中国支店 営業部(土木) 担当部長

1995年入社(山口県出身)
入社5年目より山岳トンネルの施工管理に携わる。2017年より島根県・山口県で山岳トンネル現場に作業所長として従事。
2022年4月より現職に従事し、業務の一環としてカーボンリサイクル・コンクリートに関与。