Vol. 21
「総合商社・双日のカーボンニュートラルの取り組み」
■双日のご紹介
双日株式会社は、それぞれ長い歴史を持つニチメン株式会社、日商岩井株式会社をルーツに持ち、 150年以上にわたって多くの国と地域の発展を、ビジネスという側面からサポートしてまいりました。現在も7つの営業本部を中心に、国内外約400社の連結対象会社とともに、世界のさまざまな国と地域に事業を展開する総合商社として幅広いビジネスを行っています。
【業績と拠点(2022年3月末時点)】
【本社・7営業部】
■双日グループの2050年長期ビジョン「サステナビリティチャレンジ」
双日グループは、「事業を通じた脱炭素社会の実現」に向けて、自社グループのCO2排出量削減を加速し、来たる脱炭素社会への耐性を高めるとともに、この大きな変革を新たな「機会」と捉え、幅広い分野においてビジネス構築を進めていきます。中計2020を長期ビジョン達成に向けた準備期間と位置づけ、具体的な脱炭素対応方針を策定しました。中計2023においては、方針の本格稼働に向け、各種施策を実行していくとともに、Scope3や削減貢献量(Scope4)の把握と計測を行っていきます。また、TCFDのフレームワークを踏まえて、幅広いステークホルダーとの協働、積極的な情報開示と透明性向上に努めています。
■新規事業の方針と取組事例
今後手掛ける新規事業においては、事業別に脱炭素までの考え方を整理し、2050年までにネットゼロを目指します。
事例1.太平洋島嶼国の水素社会実現に向けた検討
豪州クイーンズランド州において太陽光発電電力によりグリーン水素を製造し、太平洋島嶼国での水素普及の足がかりとなり得る小型燃料電池、小型船舶への適用に関する実証を行います。なお、本件は環境省の委託事業として採択されています。
双日は、実証事業の代表事業者として、プロジェクト全体の総括やパラオを始めとする島嶼国の現地調査、設備導入サポートを担い、共同事業者として豪州CS Energyがグリーン水素の製造と供給を行います。また、双日は、大日本コンサルタントと共に島嶼国におけるエネルギー需給状況を踏まえ、水素の用途・需要見通しの調査、グリーン水素の海上輸送による経済性やCO2削減効果等の分析を行う事で、将来的な水素サプライチェーン構築を目指します。
利活用⑴ :小型船舶
島嶼国の移動手段であるガソリン小型船舶の脱炭素化を目指し、水素燃料船舶の導入を検討する。まずは高圧移動式水素ステーションを用いて豪州QLD州内を陸上輸送し小型船舶に充填し、同州沿岸で実証を行う。
利活用⑵ :燃料電池
水素吸蔵合金カセットを使用してパラオ共和国へ水素を輸送。小型燃料電池を用いて、グリッドが不安定な島嶼国におけるバックアップ電源または一部代替電源としての活用可否を技術的観点から実証する。
事例2.九州大学とDAC技術の社会実装に向けた取り組み
双日は、国立大学法人九州大学と、大気から二酸化炭素(CO2)を直接回収するDAC技術(Direct Air Capture)とそれに関連した最先端基盤技術の実用化・事業化の推進を図るための覚書を締結しました。持続可能な社会の実現に向けて、最先端の実用化技術を活用した社会実装を通じて社会課題解決とカーボンニュートラルへの取り組みを推進します。
DAC技術とは、大気中のCO2を直接回収する技術です。従来のDAC技術は、工場や火力発電所の排気ガスなどCO2濃度が高い排出源でのCO2回収に用いられ、吸収・吸着剤を用いる回収技術がベースとなっていましたが、必要エネルギーの多さや大規模な設備導入が不可欠といった問題がありました。
九州大学カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所(以下「I²CNER」)が研究開発を進める、世界で初めての「膜」を用いたDAC技術は、空気を膜でろ過するだけでCO2を回収するため、導入地点の制約が大きく緩和され、さまざまな場所で回収装置が設置可能となり、CO2の再回収が必要ないため、必要エネルギーが大幅に削減可能となります。回収されたCO2は、燃料、化学品等の原料としての活用や、農作物の栽培、飲料、ドライアイスの製造等に直接利用できます。膜を用いたDAC技術の活用により、CO2の利用場所が広がることが期待されます。
事例3.早生樹の取り組み
東京大学発のベンチャー企業である株式会社本郷植林研究所と、植林後5年で伐採可能な早生樹の苗木を生産する双日モリノミライ株式会社を設立しました。双日モリノミライでは、本郷植林が宮崎県で試験植林を実施中であるハコヤナギ(品種名:もりのみらい17号・品種登録出願済)の苗木を生産します。このハコヤナギは、植林後5年間で1ヘクタール当たり約200立方メートル以上の成長量が期待される高成長量・短伐期が特長です。
双日と本郷植林は、ハコヤナギの特長がバイオマス発電用燃料の安定供給に適していると考え、早期の事業化を狙うとともに、ハコヤナギの生産事業を2050年カーボンニュートラル・2030年エネルギーミックスの実現に不可欠であるバイオマス発電の導入加速や地産地消の燃料供給に繋げることで、脱炭素・ポストFIT(固定価格買取制度)の体制づくりへの貢献を目指します。
2022年5月より、荒廃農地や未造林地などにおけるハコヤナギの試験植林を宮崎県・山口県・岡山県・北海道にて開始しました。
【本郷植林のハコヤナギ試験植林(植栽後1年)】
事例4.水素燃料航空機事業への参画
米国・カリフォルニア州を拠点に水素燃料搭載航空機および、航空機用水素供給網の開発・実用化を進めているユニバーサル・ハイドロジェン・カンパニー(Universal Hydrogen Co.、以下「UH2社」)へ出資し、UH2社との協業により航空機用水素燃料事業へ参画しました。
双日は、60年以上にわたる民間航空機代理店事業での豊富な実績に加え、長年の航空機ビジネスで培ってきた機体メーカー、航空会社、空港事業者との強固な信頼関係を有しており、UH2社が誇る高い技術力とネットワークを掛け合わせることで、水素燃料機の導入・普及を行い、更に水素サプライチェーンの構築に向けた新たなソリューションを市場へ提供することにより、航空分野の環境負荷低減に貢献します。
[Image provided by UH2]
【UH2社が開発する水素燃料航空機】
著者プロフィール
高橋 徹也(たかはし てつや)双日株式会社 金属・資源・リサイクル本部 企画業務室 ミライ事業開発課
2009年に新卒で双日株式会社に入社。広報部(報道担当)、合金鉄・非鉄貴金属部(貴金属のトレードビジネス担当)を経て、2022年1月より現所属部署にて脱炭素関連の新規事業開発を担当。貴金属時代にはインド・デリーへのトレーニー派遣も経験。