リレーコラム

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CARBON CIRCULAR ECONOMY

Vol. 11

「ユーグレナ社のバイオ燃料事業のご紹介」

 株式会社ユーグレナは、2005年12月に世界で初めて微細藻類ユーグレナ(和名:ミドリムシ、以下「ユーグレナ」)の食用屋外大量培養に成功した東京大学農学部発のベンチャー企業です。
 現在、当社は、「Sustainability First(サステナビリティ・ファースト)」をユーグレナ・フィロソフィーと定義した上で、サステナビリティを軸とした事業を展開し、当社の事業や商品を通じて、お客様、社会、そして地球がサステナブルになることを目指しております。具体的には、ユーグレナやクロレラなどを活用した食品・化粧品の製造・販売、使用済み食用油やユーグレナ由来油脂を原料としたバイオ燃料の製造実証、遺伝子解析サービスの提供、バングラデシュにおけるソーシャル・ビジネスなど幅広く展開しています。
 本コラムでは、その中でも、カーボンニュートラルの実現に直接的に貢献しうる、当社のバイオ燃料事業をご紹介させていただきます。

 

 

1.これまでの取り組みについて

 

 当社のバイオ燃料事業は、2010年に開始したユーグレナ由来油脂研究に端を発し、2015年からは「国産バイオ燃料計画」と銘打ち、横浜市、千代田化工建設株式会社、伊藤忠エネクス株式会社、いすゞ自動車株式会社、ANAホールディングス株式会社の1市4社と共に、バイオジェット燃料によるフライト、及び次世代バイオディーゼル燃料による公道走行を目指す取り組みを実施してまいりました。2018年6月には新たにひろしま自動車産学官推進連携会議とパートナーシップを締結、さらに同年10月末には、日本初となるバイオ燃料製造実証プラント(以下、実証プラント)を完成させました。その後、2020年3月に次世代バイオディーゼル燃料が完成、供給を開始し、バイオジェット燃料については、2020年1月にASTM Internationalが定める国際規格であるASTMD7566規格を取得し、2021年3月にバイオジェット燃料の完成となりました。同年6月には国土交通省航空局が保有・運営する飛行試験機に、またホンダジェットに供給し飛行を実施しております。2021年までに陸・海、累計社40以上への供給の実績があり今後も拡大予定です。

 

 

2.当社の製造・販売するバイオ燃料の特徴

 

 当社の実証プラントでは、使用済み食用油とユーグレナ油脂を原料に、年産最大125KLのバイオジェット燃料と次世代バイオディーゼル燃料を製造しております(図1)。

 

図1 ユーグレナ社の実証プラント

 

 当社が製造するバイオ燃料は、使用済み食用油やユーグレナ由来油脂を主原料としており、食料との競合や森林破壊といった問題を起こさない持続可能性に優れた燃料です。また、それら原料は植物由来であり、植物はCO2を吸収しながら成長するため、燃料の燃焼段階ではCO2を排出するものの、燃料を使用した際のCO2の排出量が実質的にはプラスマイナスゼロとなるカーボンニュートラルの実現に貢献いたします(図2)。

 

図2 カーボンニュートラル概念図

 

 当社製造のバイオ燃料は化石燃料と同等の性質を持つ炭化水素燃料であり、現行車両や航空機にそのまま利用可能です。バイオディーゼルにおいて、従来型バイオディーゼルは混合上限5%と制限されていますが、当社の次世代バイオディーゼル燃料は100%で使用可能あり、水素や電気といった代替エネルギーに必要とされる新たなインフラ整備の必要が無く、効率的な利用拡大が期待できるものです(図3)。なお、当社次世代バイオディーゼル燃料は、いすゞ自動車(株)が全負荷性能試験やWHTC5排出ガス試験を実施しており、その性質は市販軽油と同等であることが実証されております。2021年11月には、岡山国際サーキットで開催されたスーパー耐久シリーズにおいて、マツダ株式会社のSKYACTIV-D 1.5(従来のディーゼルエンジン)搭載車「MAZDA SPIRITRACING Bio concept DEMIO」に100%の状態で使用された実績もございます。

 

図3 従来のバイオディーゼル燃料と次世代バイオディーゼル燃料との比較

 

 また、2021年6月に陸海空すべての分野でのバイオ燃料使用を達成したことを機に、より多くの一般生活者にバイオ燃料を身近に感じていただくため、当社が製造・販売するバイオ燃料のブランド名を『サステオ』と命名いたしました。『サステオ』は、「サステナブルなオイル」が由来であり、バイオ燃料利用が日々の生活でも”当たり前”となる社会の実現を目指すものです。

 

 

3.今後の展開

 

 現在、当社は2025年の商業化に向けて着実に準備を進めており、2021年10月にはプラント建設想定地における予備的基本設計(実行可能性調査の後、基本設計の前に実施される概念設計等)を開始いたしました。また、商業化に向けて最も重要となる原料油脂の確保において、使用済食用油を中心する非可食油脂の調達を進めるとともに、微細藻からの油脂生産について、現在低コスト化大規模培養の研究開発を進めております。これらを通じて2025年には、年産25万KL以上のバイオジェット・次世代ディーゼル燃料を200円/L以下のコストで製造する商業生産体制を整える計画です(図4)。
 今後も、カーボンニュートラルの実現に向けて、社内はもちろんのこと、関係各所の皆さまと一丸となって邁進してまいります。

 

図4 バイオ燃料事業の歩みと今後の計画

著者プロフィール

株式会社ユーグレナ
エネルギーカンパニー バイオ燃料事業部 部長 江 達

神戸大学経済学部卒業後、住友商事に入社し、化学品のトレード、自動車販売会社の事業運営等を担当、自動車メーカーへの出向なども経験。
その後ドームに転職し、サプライチェーンを管轄、物流改革を主導した。2017年ユーグレナに入社し、現在に至る。